Mohammad Choucair らは、ナトリウムエトキシドの熱分解によるグラフェンのグラム単位での大量合成法について報告している。この方法によって、単層グラフェンを原子レベルでボトムアップ的に合成することができる[37] [38]

ナトリウムとエタノールをソルボサーマル法を用いて低温で熱分解し、熱分解反応による生成物を水で洗浄して乾燥することで純粋なグラフェンが得られる。前駆体の急速熱分解によるグラフェン生成は、単なるナトリウムエトキシドの燃焼ではなく、ナノレベルで分散したエタノールが発火してエトキシドを熱分解する反応である。この反応により、単原子的なグラフェンシートの結合物が生じる。エタノールの発火点は微小であり疎らに散在しているため、グラフェンシートの核形成はエタノールの量が多い領域の周辺で起こる。Choucair らは、この現象を「ポップコーン効果」と呼んでいる。

Choucair らは、この方法でマイカ基板上に形成したサンプルの複数の断面を記録し、サンプルの起伏に沿って多数のステップ高を測定した。シート表面と基板の間で測定されたステップ高は一定して4オングストローム程度であったことから、サンプルの厚さは原子1個分しかないことが示唆された。またサンプルの至るところで10-7m前後の狭い隆起が観察され、隆起と隣接するシートとの間に狭い谷間ができていた。こうした不規則な形状のシートができるのは、熱分解の段階でサンゴのような形に結合したシートが、高周波によって分解された結果であるとしている。高周波分解によって、グラフェンを断片化し、散在化することになる。

高周波分解前のサンプルのSEM画像では、10-4m超のスケールで存在する多孔質構造の中に個々のグラフェンシートが抱え込まれているの様子が観察されている。グラフェンは最初、結合したシートとして生成され、弱いサンゴ状構造になるが、蒸留水中で数分間高周波分解を受けることによって容易に分離し個片化することが分る。

タッピングモードでのグラフェンのAFM画像と高さプロファイル (Choucair et al.”Gram-scale production of graphene based on solvothermal synthesis” GraphITA 2011)

熱分解で合成されたグラフェンのサンゴ状構造のSEM画像 (Choucair et al.”Gram-scale production of graphene based on solvothermal synthesis” GraphITA 2011)