この方法では、炭素源を使い、金属基板の原子構造を利用してグラフェンのエピタキシャル成長を行う。通常、ルテニウム基板上に成長させたグラフェンは膜厚の均一性が得られず、最下層のグラフェンと基板の結合がグラフェンの特性に影響を及ぼすとされる[23]。一方、イリジウム基板上に成長させたグラフェンは基板との結合が非常に弱く、膜厚も均一で、非常に規則的な構造とすることができる。イリジウム上のグラフェンも、他の多くの基板上のものと同様、やや波打っている。この波うち(リップル)の長距離秩序によって、ディラックコーンのミニギャップ生成が見られるようになる[24]。数層からなる高品質グラフェンシートを1cm2超の面積で合成する方法としては、メタンを炭素源とするニッケル薄膜上での化学的気相成長法(CVD: chemical vapor deposition)がある。この方法で合成したグラフェンシートは、様々な種類の基板に転写することができ、エレクトロニクスへの幅広い応用が可能であることが実証されている[25] [26]

同法の改良版として、銅箔を用いる方法がある。この方法では、非常に低圧の条件下で、単層グラフェンの形成後にグラフェンの成長が自然に止まり、任意の大きさの大面積グラフェン膜を形成することができる[25] [27]。この単層成長は、メタンにおける炭素濃度の低さにも起因するとされる。メタンよりも炭素数の大きいエタンやプロパンなどの炭化水素ガスを用いると、二層グラフェンの成長が導かれることがある[28]。大気圧CVD成長においては、銅箔の場合でも、ニッケル薄膜と同様、多層グラフェンが形成される[29]。金-ニッケル合金を触媒として用いるグラフェン成長の温度条件は、従来のCMOSプロセスに適合することが実証されている[30]

(A)銅箔上に30分で成長したグラフェンのSEM像。(B)銅の粒界と段差、2~3層のグラフェン薄片とグラフェンの皺の高分解能SEM像。囲み内は折りたたまれたグラフェン端部のTEM像。(C)SiO2/Si基板に転写されたグラフェン薄膜。(D)ガラス板上に転写されたグラフェン薄膜 (Xuesong Li et al., Science (2009) doi:10.1126/science.1171245)