高純度のシリコンやガリウム砒素などを3K付近の極低温で強磁場のかかった状態におくと、ホール抵抗が一定となる領域(プラトー)が出現し、同時に磁気抵抗がゼロになる。この現象が量子ホール効果である。プラトーにおけるホール抵抗は、h/ve2e は電荷素量、h はプランク定数)と表され、材料の大きさや性質に依存せず一定である。とくに、v = 1 のときのホール抵抗 h/e2 = 25812.806Ω は、標準抵抗の値として利用されている。1985年には、量子ホール効果の発見によって Klaus von Klitzing がノーベル賞を受賞した。

通常の量子ホール効果は、vが整数となるため整数量子ホール効果と呼ばれる。整数量子ホール効果では、量子化されたホール伝導度σxyve2/h と表され、e2/h の整数倍の値をとる。これに対して、v の値が分数となる現象が、グラフェンやガリウム砒素系化合物半導体など一部の材料で確認されており、分数量子ホール効果と呼ばれている。

グラフェンでは、通常の量子ホール効果からシーケンスが1/2だけずれた異常量子ホール効果が生じ、そのホール伝導度は、σxy = ±4・(N + 1/2)e2/h と表される。ここで、整数 N はランダウ準位充填率(第何番目のランダウ準位まで電子が詰まっているかの指標)に相当する。因数4は、バレーの2重縮退およびスピンの2重縮退に由来する[5]。また、グラフェンの量子ホール効果は極低温に限らず、20℃程度の室温条件でも観測できる[57]。こうした特異な挙動は、グラフェンにおいて質量を持たないディラック電子が現れることの直接的な結果である。

二層グラフェンも量子ホール効果を示すが、ホール伝導度は σxy = ±4Ne2/h となり、N = 0 における最初のプラトーは存在しない。これは、二層グラフェンが電荷中性点で金属的となることを示唆している[5]