分離された単層グラフェンの原子構造は、金属格子上に留められた浮遊グラフェン(suspended graphene)のシートを透過電子顕微鏡(TEM: transmission electron microscopy)で観察することによって研究された[46]。電子の回折パターンから、グラフェンが予想通り六角形の格子を持つことが示された。

浮遊グラフェンでは、平面シートが波打つような歪み(リップル)を持っており、リップルの振幅が1nm程度であることも分った。リップルは、2次元結晶の不安定性の結果であり、グラフェン固有の内因的なものであると考えられる[5] [47] [48]。あるいは、すべてのグラフェンのTEM像に見られる汚れに起因した外因性のものであるとも考えられる。SiO2基板上での分離された単層グラフェンの原子スケール分解能による実空間画像は、走査トンネル顕微鏡によって得られた[49] [50]。リソグラフィ技術を使って作製されるグラフェンは、フォトレジストで覆われているため、原子分解能の画像を得るためにはフォトレジストの洗浄・除去を行わなければならない[49]。フォトレジストなどの残渣はTEM画像で観察される吸着質となりうるものであり、浮遊グラフェンのリップルもこれで説明がつく場合がある。SiO2表面上でのグラフェンのリップルは、下層のSiO2に対するグラフェンの配置によって決まるもので、内因的なものではないとされている[49]

マンチェスター大学は、グラフェンの自己修復能力について報告している[51]。グラフェン膜上にパラジウムなどの金属原子があるとき、そこを起点にグラフェンに穴が開き、パラジウムの供給を続けることで穴が広がっていく。穴の端部からパラジウムを取り除くと、穴の拡大は止まる。研究チームは、この後、グラフェンに開いた穴が自然に修復されていく様子を観察している。修復に使われる炭素原子は、穴の近傍にある炭素ベースのコンタミネーションから供給される。自己修復された部分のグラフェンの結晶では、通常の6員環の炭素に加えて、5員環や7員環がほぼランダムに混在しており、ときには8員環も含まれている。5・7・8員環の結晶欠陥は、格子空孔の解離によって生じている可能性があり、転位双極子を構成すると考えられる。一方、グラフェンに開いた穴が小さい場合には、6員環炭素だけで完全な修復がなされるという。