ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、ナノ結晶を分散させた液体をグラフェン層で封止し、液体中でのナノ結晶の成長過程を電子顕微鏡で画像化する技術を開発している[141]。液体中で起こるナノスケールの物理、化学、生物学的現象がその場で直接観察でき、動画を撮ることも可能なため、多方面の研究開発への応用が期待される。

グラフェンは原子1個分の厚さしかなく、電子ビームを散乱させずに透過させる。機械強度が高く、浸透性がないことや、化学的反応性がないといった性質もあり、液体セル内の試料を電子顕微鏡の高エネルギービームから保護するのに役立つ。研究チームは、白金ナノ粒子を分散させた溶液をグラフェンの層間に注入して液体セルを作製した。グラフェンは銅箔上にCVD成膜し、孔のあいたアモルファスカーボンで支持された透過型電子顕微鏡(TEM)用グリッドの金メッシュに直接転写した。グラフェン同士の間に働くファンデルワールス力の作用が相対的に強いため、6~200nmの範囲の厚さであれば、液滴はグラフェンの層間に確実に捕獲されるという[142]

電子顕微鏡観察用グラフェン液体セル。2層のグラフェンの間にサンプル液体を封止する。ナノ結晶が液中で成長する様子を原子スケールの分解能を持つTEMでその場観察できる (出所:Berkeley Lab)