グラフェンは、導電性と透明性が高いことから、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機太陽電池セル、有機ELなどに用いられる透明電極材料として有望である。特に、グラフェンの機械強度およびフレキシブル性は、ITO(インジウム・スズ酸化物)に対する優位性であるといえる。また、溶液塗布によってグラフェン薄膜を大面積に成膜するといった用途も考えられる[115]

2008年には、マックス・プランク研究所のグループが、グラフェンを色素増感太陽電池の透明電極に適用した。グラフェン膜は酸化グラファイトを剥離したものを熱還元することで形成した。グラフェン膜は550 S/cm という高い導電性を示し、波長1000~3000nmの領域での透明度は70%超であった。化学的安定性および熱的安定性が高く、ぬれ性を調整することで表面の超平坦性も確認された[116]

色素増感太陽電池へのグラフェン透明電極の適用例(Klaus Mllen et al., Nano Lett.(2008) doi:10.1021/nl072838r)



2009年には、シンガポール国立大学のグループが、大面積で切れ目がない数層のグラフェンでできた透明導電膜をCVD成膜し、太陽電池の電極(アノード)に適用した。このときのエネルギー変換効率は最大1.71%であり、ITOを用いた場合の変換効率3.1%と比較すると55.2%の減少となった[117]

有機ELのアノードにグラフェンを用いた研究も報告されている。グラフェンを用いたデバイスの電子的・光学的性能は、ITOを用いたデバイスに近いことが実証されている[118]

2010年、Matyba らは、すべてを炭素系材料で構成した発光電気化学セル(LEC)を実証した。化学的に誘導されたグラフェンをカソードとし、導電性ポリマー(PEDOT)をアノードとした[119]。先行研究と異なり、このデバイスでは金属電極をいっさい使わず、炭素系材料だけで電極を構成した。グラフェンをアノードとして用いるLECについても同じ論文で実証された。

透明導電性材料の特性評価用の参照材料としてグラフェンを利用した例もある。2009年に Eigler は、単層グラフェンが2.3%の白色光を吸収するという性質を利用して、シート抵抗と透明度を組み合わせた透明導電度(Conductivity of Transparency)を定義した。このパラメータは、2つの独立変数を使わずに異なる材料を比較するために利用された[120]