抗体機能をもたせたグラフェンシートは、化学修飾のしやすさ、大きな表面積、原子スケールの膜厚、分子ゲート構造といったグラフェンの特性から、生体検出・診断デバイスとして有望であるといえる。

2008年には、カンザス州立大学の Vikas Berry らが、化学修飾されたグラフェン(CMG: chemically modified graphene)を利用した細菌検出デバイスやDNAセンサ、DNAトランジスタなどを作製した。高感度の細菌検出デバイスは、細菌1個が付着することにより、化学修飾されたp型グラフェン上に1400程度の電荷キャリアが生成される。同様に、グラフェン上に係留された一本鎖DNAが相補的DNA鎖と結合すると、ホール密度が5.61×1012cm-2 まで可逆的に増大する。さらに、表面官能基の操作によるデバイス感度の制御、表面極性の変化による極性選択性の切り替え、厚膜CMGおよびシャープな皺の寄ったCMGへのDNAの優先的付着などが実証されている[133]

バイオ分野における最も有望なグラフェン応用は、高速かつ低コストなDNAシーケンスである。グラフェンをナノ電極としてナノ細孔に組み込むことで、ナノ細孔を利用した1分子DNAシーケンスのボトルネックが解消できる可能性が指摘されている[134]

グラフェンを利用したDNAシーケンサの概念図 (Mingsheng Xu et al., Small (2009) doi: 10.1002/smll.200900976)