グラフェンは炭素の同素体の一種である。炭素原子1個分の厚さしかない平面状の物質であり、炭素原子のsp2結合によって形成されたハチの巣状の結晶格子で構成されている。「グラフェン(graphene)」の名称は、グラファイト(graphite)と接尾辞の -ene を組み合わせたもので、H. P. Boehm によって名づけられたとされる[1]。Boehm はグラフェン研究の先駆者であり、1962年には単層の炭素箔について記述していた[2]

グラフェンにおける炭素-炭素結合の結合距離は、およそ0.142nmとされる[3]。グラフェンシートを層間距離0.335nmで多数積層するとグラファイトが形成される。グラフェンを構成要素とする炭素同素体には、グラファイトの他、炭、カーボンナノチューブ、フラーレンなどがある。また、グラフェンは、ベンゼン環が無限につながった分子とみることもでき、この観点からは多環芳香族炭化水素(PAH: polycyclic aromatic hydrocarbons)の特殊な形態であるともいえる。

マンチェスター大学の Andre Geim と Konstantin Novoselov は、「2次元材料グラフェンに関する画期的な実験成果」を理由に2010年のノーベル物理学賞を受賞している[4]。Geim と Novoselov が、2007年に Nature Materials で発表した論文 “The rise of graphene” では、グラフェンを次のように定義している。

「グラフェンは、2次元のハチの巣状格子内に周密に詰め込まれた単層の炭素原子であり、他の全ての次元のグラファイト系材料の基本構成ブロックである。グラフェンを丸く包めば0次元のフラーレン、巻けば1次元のカーボンナノチューブ、積み重ねれば3次元のグラファイトが得られる」[5]

グラフェンとフラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイトの形態的関係性 (A. K. Geim & K. S. Novoselov, “The rise of graphene”. Nature Materials (2007) doi:10.1038/nmat1849)